探究学習 おすすめテーマ「インクルーシブ」

探究学習 おすすめテーマ「インクルーシブ」

◆「インクルーシブ」の現状を知る

「インクルーシブ」は「全てを含む」「包摂的」といった意味をもつ。近年、教育や保育の現場でこの言葉が注目されている。インクルーシブ教育とは、障害者と健常者がともに学ぶ教育のことである。

教育現場では、共生社会の形成に向けて、インクルーシブ教育システムの構築が望まれている。「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。このような全員参加型の社会を目指すことは、我が国において積極的に取り組むべき重要な課題である。学校教育には、「共生社会」の形成に向けて、重要な役割を果たすことが求められている。

保育に関しては、令和5年4月1日から、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令が施行された。これまでは、例えば、保育所に児童発達支援事業所が併設されていても、保育所を利用する子どもと児童発達支援事業所を利用する障害児をと一緒の保育室で保育することは、認められていなかった。

今後は保育所に他の社会福祉施設との併設を行う際に、特有の設備・専従の人員についても共用・兼務できることとなった。

文部科学省1.共生社会の形成に向けて

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884.htm

厚生労働省 子ども家庭局 保育課厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 保育所等におけるインクルーシブ保育に関する留意事項等について

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/443408.pdf

◆「インクルーシブ」について視野を広げて考える

特別支援教育

 日本は、義務教育段階で、特別支援学校に在籍している児童生徒は約65,000人で全体の0.6%程度、特別支援学級に在籍している児童生徒は約155,000人で全体の1.5%程度、通級による指導を受けている児童生徒は約65,000人で全体の0.6%程度となっている。また、小・中学校には、就学基準に該当する児童生徒が、特別支援学級で約17,000人、通常の学級で約3,000人在籍している。さらに、通常の学級には、LD、ADHD、高機能自閉症等の発達障害の可能性のある児童生徒が6.3%程度在籍していると考えられる。

 特別な指導を受けている児童生徒の割合を他国と比べてみると、英国が約20%(障害以外の学習困難を含む)、米国は約10%となっており、これに対して、日本は、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導を受けている児童生徒を合わせても約3%に過ぎない。これは、特別な教育支援を必要とする児童生徒の多くは通常の学級で学んでおり、これらの児童生徒への対応が早急に求められていると考える。しかし、日本の義務教育段階での就学率は極めて高く、障害を理由として就学免除・猶予を受けている者がほとんどいない点について高く評価すべきである。

文部科学省1.共生社会の形成に向けて

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884.htm

障害者の権利(2006年〜平成)

障害者の権利に関する条約が、平成18年に国連総会で採択され、平成20年に発効した。日本はこの条約に平成19年9月に署名した。平成21年には、「障がい者制度改革推進本部」が設置され、当面5年間を障害者制度改革の集中期間と位置付け、改革の推進に関する総合調整、改革推進の基本的な方針案の作成及び推進に関する検討等を行うこととされていた。障害者施策の推進に関する事項について意見を求めるために「障がい者制度改革推進会議」が設置され、平成22年、同会議による第一次意見が取りまとめられた。

インクルーシブ教育について、

2010年の文部科学省の考え 「交流及び共同学習」では「インクルーシブ教育」は実現できない

障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワークが2010年に述べた考えをみてみましょう。

「交流及び共同学習」は2004年の障害者基本法の一部改正において、生まれた言葉である。初めは、普通学級に在籍している障害をもつ子の存在が認められ、どの子も分け隔てられることなく共に学び育つためのものとして「共同学習」が提起された。決議では、「分け隔てられることなく共に」という文言が残された。つまり、「交流学習」と「共同学習」は、「分離した上でいっしょにおこなう学習」と「統合した上でおこなう学習」として、本来、別の意味を持つものであった。しかし、文科省は、障害者基本法の一部改正以降、「交流及び共同学習」として、一つの言葉として使うようになり、現在に至っている。

ここで、文科省の「交流及び共同学習ガイド」をみてみましょう。

障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に参加する活動は、相互のふれ合いを通じて豊かな人間性をはぐくむことを目的とする交流の側面と、教科等の狙いの達成を目的とする共同学習の側面があるものと考えられます。「交流及び共同学習」とは、このように両面の側面は一体としてあることを明確に表したものです。また、この二つの側面は分かちがたいものと捉え、推進していく必要があります。

活動場所がどこであっても、在籍校の授業として位置付けられていることに十分留意し、教育課程の位置付け、指導の目標などを明確にし、適切な評価を行うことが必要です。

と解説されています。これに関して、障害者権利条約批准・インクルーシブ教育推進ネットワークは次のように述べています。

「分け隔てられることなく共に」として出された「共同学習」は、それまでもおこなわれていた教科における交流の意味に変質させられてしまい、分けた上でのそれぞれの教育課程における教科学習として位置づけられるようになったのである。つまり、「交流及び共同学習」は以前の「交流学習」となんら違いがない。そればかりか、新学習指導要領では、「教科の目的達成」までもが問われ、交流も「できる・できない」の評価のもとで行われるようになり、「できない」ことで更に巧みに分けられはじめているのである。

これは、以下の資料の抜粋(一部改変)です。文部科学省の行ってきたことや、特別支援学校の教員・保護者のアンケートなどもあるので、みてみましょう。

文部科学省 「交流及び共同学習」では「インクルーシブ教育」は実現できない

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1298938.htm

◆「インクルーシブ」に関する探究学習のテーマ例

これまで、あなたが過ごしてきた「インクルーシブな環境」を振り返ってみよう。

今のあなたの所属しているコミュニティーは、どれくらいインクルーシブであるといえるだろうか。あなたの学校・地域・県・日本などさまざまなコミュニティーについて、他のコミュニティーと比較して考えてみよう。

インクルーシブが不十分な分野と、反対に進んでいる分野を挙げてみよう。

あなたへの問い

インクルーシブな社会が目指されているのはなぜだろう?

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