あなたは、「教育」に「格差」を感じたことはあるだろうか。小学校のとき「隣のクラスがよかったな」、中学校のとき「あの子みたいに海外に行ってみたいな」、高校で「あの大学に行きたいけど、学費が高いな」、と思ったことはないだろうか。そもそも、「もっと都会に生まれたかった」などと、生まれた環境に劣等感を感じたこともあるかもしれない。
日本では、その能力に応じて等しく教育が受けられる。その点では平等で、格差などないのかもしれない。他人と比べなければ、格差に気づくことはないだろう。しかし、格差はわかりにくい形で存在する。
例えば、生まれた場所について考えてみよう。あなたの地元(あるいは今住んでいるところ)は「都会」「田舎」「その間」のどれだろうか。ひとまず分類してみよう。そして、自分の地元が他の2つと比べて優れているところと、反対に他の2つの地域がうらやましいと感じるところを挙げてみよう。そして、それらが教育とどのように結びついているのか、考えてみよう。
例えば山間部に住んでいる人は、自分が住んでいる場所に「塾がない」と感じているかもしれない。また都市部に住んでいる人は、自分の住む街に自然に親しめる環境がないことが気になるかもしれない。
あなたが自分の置かれている教育環境に「格差」を感じているなら、それは探究への素晴らしいテーマになる。自分の環境とそして自分と向き合うことは重く、苦しいかもしれない。無理に「格差」と向き合う必要はない。
もしあなたが「教育格差」を探究するなら、自分と周囲の人への最大限の配慮を持って、じっくり丁寧に向き合ってほしい。きっと、深く、鋭い探究となるだろう。
自分の感じる「教育格差」は本当に「教育」の格差だろうか。教育以外の可能性も考えてみよう。例えば、「経済格差」「地域格差」「年代格差」などが考えられるだろう。
また、少し視野を広げて考えて、日本にいる外国にルーツを持つ人々(あなたがそうである場合は考えやすいだろう)が感じる教育の壁はなんだろうか。その結果として、教育格差は生じていないだろうか。
格差がなくなるということは、全てが「均一」になるということでもある。平等であればそれでいいのだろうか。さまざまな教育を受ける人がいるからこそ、多様な社会が形づくられるのではないだろうか。改善すべき格差以外に、尊重すべき差はあるだろうか。
教育格差の中には、経済面の支援があれば解決するものもある。あなたが感じている教育格差の中に、経済格差や地域格差が関係しているものはないだろうか。また、もし、経済格差や地域格差が解消されたら、その教育格差は解決するだろうか。周囲の人々の思い込みや、自分の意識・心理との関係は何かあるだろうか。
バブル経済崩壊後の経済の低迷から穏やかに回復する中で、戦後最長となる景気拡大を果たしました。この「実感なき景気回復」とも言われる中で、以前に比べて所得の格差が拡大している のではないかとの指摘がなされてきました。相対的貧困率について、17歳以下の子どもに着目すると、他の国は所得再分配によって相対的貧困率は低下しているなか、日本だけは、再分配後に相対的貧困率が上昇している。
学習塾に通っている児童・生徒は、通っていない児童・生徒よりも学力が高い傾向がある。この傾向は、特に中学校の数学において顕著に見られる。しかし、教員一人あたりの生徒数が少なく、教師の平均年齢が高い(つまり経験豊富な教師が多い)中学校では、通塾にともなう数学の学力差が小さくなる。つまり、学習塾に通っていない生徒の学力を保証するためには、教員を増員するとともに、ベテラン層の教員を厚く配置する、あるいは若手教員の技能形成の機会を充実させることが効果的である。
参考資料)
平成21年度文部科学白書_04
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab200901/1295628_004.pdf
文部科学省 学力格差にどう立ち向かうか
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/08013006/003/014.htm
また、世界の10代の若者の格差を考えてみよう。あなたと同じ年齢の人で、高校に通いたくても通うことができていない人もいる。そもそも一度も学校に通うことができていない人もいる。
富裕層と貧困層の経済格差など経済の二極化が進む状態のことをいう。所得階層別に収入や貯蓄の増減などをグラフ化すると、上下に開くK字を描くことから名付けられた。新型コロナウイルス禍が長期化するなか、低賃金労働者ほど雇用環境が悪化し、株高の恩恵を受ける富裕層に富が集中する現象が世界的に広がっている。格差が広まっている状態があ流ことは、教育にどのような影響を及ぼすだろうか。
K字経済 きょうのことばセレクション
https://www.nikkei4946.com/knowledgebank/selection/detail.aspx?value=1830
家庭や地域の教育力の低下や子どもたちを取り巻く教育環境の悪化が指摘されている。地域社会が学校とともに、子どもの健やかな成長を支援する取り組みが進められている。例えば、地域コーディネーターは、学校支援ボランティアが実際に活動する際に、学校とボランティア、あるいはボランティア同士が、円滑に連携、協力できるよう連絡調整などを行う役割を担う。地域コーディネーターには、特に子どもたちや学校の状況、ニーズを把握していることや地域の情報に通じていることが求められる。
とちぎ学校支援活動運営協議会 栃木県教育委員会 地域と学校を結ぶ! 〜学校支援ボランティア活動の充実のために〜
さらに、世代を広げて考えてみよう。大学進学率は、上昇している。高校も、ほとんどの人が卒業している。「夜間学級」や「識字学級」を知っているだろうか。学び直し、特に義務教育の過程での学びを保障するための学びの場だ。「夕やけがうつくしい」という作文は、教育の保障に関して、考えるヒントを与えてくれるかもしれない。上の年代だけではない。今の子どもたち、そして今後生まれてくる子どもたちのために、教育ができることはなんだろう。
・教育格差はなぜ生じるのか。
・教育格差は、どのように改善すればよいか。
・人が、教育格差に気づくきっかけは何だろうか。
・格差を改善するために、どのような取り組みが行われているのだろう。行政・民間・学校などの複数の期間の取り組みを調べてみよう。
・未来の子供たちの教育格差をなくすために、あなたにできることは何だろうか。
あなたへの問い
・格差のなかで生きるためには、どうすればよいだろうか。
https://education.ownerjapan.co.jp/article/human/0004a-10/
https://education.ownerjapan.co.jp/article/education/0008a-5/
https://education.ownerjapan.co.jp/article/education/0002a-10/