探究学習 おすすめテーマ「商店街活性化」

探究学習 おすすめテーマ「商店街活性化」

◆「商店街活性化」の現状を知

近年、地方都市を中心として少子化高齢化や人口減少が急速に進んでいる。それに伴い、特に地方の商店街では後継者不足による空き店舗の増加、消費スタイルの多様化や大型店との競争など、様々な課題を抱えている現状である。そこで中小企業庁では、3年に1度、全国の商店街に対し、景況や直面している問題、取り組んでいる事業等について調査を実施している。今回は令和3年度の調査をもとに、商店街の現状について見ていく。

1商店街あたりの平均店舗数は、平成27年度が54.1店舗であるのに対し、令和3年度では51.2店舗とやや減少していることがわかる。1商店街当たりの平均空き店舗率に関しても、平成18年度の8.98%に対し、令和3年度では13.59%と、空き店舗自体も増加傾向にあることがわかる。この調査は都市部も含めた全国の商店街を対象としているため、地方ではさらに店舗の減少、空き店舗の増加が進んでいると考えられる。

商店街の最近の景況に関して「衰退している」、「衰退の恐れがある」と答えた商店街は合わせて67.2%である。また、最近3年間の商店街への来訪者数の変化に関して、「減った」と答えた割合は、平成30年度が55.1%であるのに対し、令和3年度では68.8%とかなり上昇していることがわかる。これらのことから、地域に関わらず多くの商店街が課題を感じていることが分かる。

経営者の高齢化による後継者問題、店舗の老朽化、商圏人口の減少など、商店街が抱える問題は山積みである。今回は、「商店街活性化」に着目し、事例とともに様々な取り組みについて見ていこうと思う。

参考)

令和3年度商店街実態調査/中小企業庁

https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2022/220408shoutengai.htm

◆「商店街活性化」について視野を広げて考える

商店街活性化の事例

・八日町商店街 宮城県気仙沼市

八日町商店街は、気仙沼駅から歩いて約 15 分に位置し、商店街の中央部には気仙沼市役所が立地している。飲食店や衣料品店、家具屋、金物屋など、様々な店舗が営業している。

東日本大震災の津波被害によって生じた空地、空き店舗の有効活用、少子高齢化により衰退する商店街の活性化を課題として、2017年から取り組みを始めた。主な取り組みとして、空き地・空き店舗を活用した様々なイベントの実施が挙げられる。具体的には、空き地での映画鑑賞会など、2018年2月から10月にかけてイベントを計10回行った。その他にも、「八日町のアカリプロジェクト」と題して、足元の高さに照明を設置することで、空き地や駐車場などの暗がりが目立たず、歩道空間が活きる街並みを実現した。

結果として、これらの取り組みは民間のコンペティションにて特別賞を受賞し、昼間の来訪客の増加、商店街全体の来訪客の増加につながった。

・大曲花火通り商店街 秋田県大仙市

大曲花火通り商店街は、秋田県大仙市の JR ⼤曲駅⻄⼝の南に立地している。⽇本三⼤花⽕⼤会の⼀つとして知られる「全国花⽕競技⼤会」(通称「⼤曲の花⽕」)の開催地としても有名である。

商店主の高齢化による店舗数の減少や、来訪者数の減少を課題として2012年から取り組みを始めた。主な取り組みとして、歴史や地域資源を活かしたブランドの開発を行った。具体的には、地元酒蔵と戦前の銘柄を復活させた日本酒や甘酒、地元の鮭養殖業者と共同開発した鮭の燻製など、各店の強みを活かした計7品を開発した。また店主が講師として、専門的な知識や情報を無料で来訪者に伝える「まちゼミ」を開催した。店主と来訪者のつながりを創出するだけでなく、まちゼミの準備を通じて各店同士が知り合うきっかけにもなっている。

結果として、新規出店の増加、新しい客層の獲得につながるだけでなく、まちゼミを通して店主同士での情報交換の機会が増え、新しいイベントの企画・開催などにもつながっている。

・七日町商店街 山形県山形市

七日町商店街は、山形県山形市の市の中心部にあり、JR山形駅から市役所に向けた通りに立地し、 山形駅から徒歩 15 分に位置している。400 年以上前からある商人の町として栄えている。

高層マンションを含む都市開発による地域住民・来訪者の属性の変化に対応し、地域住民のニーズにこたえるまちづくりを目指して、2016年から取り組みが始まった。具体的な取り組みとして、まずビジョンの統一化を行った。商店街振興組合、まちづくり会社、NPO法人、町内会の4組織が連携して活動をしていたが、各組織が掲げるまちづくりのビジョンの方向性がばらばらであったため、検討会を立ち上げ、方向性を統一した。また、住民ニーズに合った商店街づくりを行うため、地域居住者へのアンケート調査を実施し、子育て支援施設や観光案内所、地場商品のアンテナショップ、駐車場のニーズが高いことが浮き彫りとなった。そこで、上記の4つの機能と、多目的利用ができるイベントスペースを備えた交流拠点施設を整備した。

結果として、多くの来訪者の呼び込みに成功し、高層マンションなどで増えた新たな客層のニーズに合う商店街へと変化した。

参考)

商店街における取組事例集/中小企業庁

中小企業庁ホームページ

地域の持続可能な発展に向けた商店街づくりのノウハウ集

別冊:商店街における取組事例集

https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2022/220426shoutengai.html

「商店街活性化」に関する探究学習のテーマ例

・商店街にはどのような課題があるのだろうか。

・商店街にはどのような魅力があるのだろうか。

・地域の商店街は、どのような取り組みをおこなっているのだろうか。

あなたへの問い

近くの商店街にはどのような魅力がありますか?


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