日本の地方にはその地域特有の言葉、いわゆる「方言」というものが存在する。地元にいる高校生までは、方言について意識することはあまりないかもしれないが、大学進学や就職に伴い、地元を出ると言葉の違いを意識するようになる。言葉の意味が通じなかったり、言葉のイントネーションが他の人と異なったりなどの経験をしたことがある人も多いだろう。今回は様々なデータをもとに、方言について理解を深めていきたいと思う。
日本では、「方言」と「訛り」が存在する。一見、同じもののように感じるが、両者には違いがあるようだ。方言とは一般的に、共通語に対して、ある地方だけで使用される言葉のことを指す。例えば、北海道の「なまら(非常に)」や沖縄の「めんそーれー(いらっしゃい)」は方言に当たる。一方で訛りとは、標準語に比べて音韻上、多少の相違がある地方的な発音のことを指す。(広辞苑)
日本における方言は数多く存在し、その種類については諸説ある。「方言区画論と方言境界線と方言圏の比較研究(安倍)」によると、日本の国語学者である東条操(とうじょうみさお)は方言区画論を提唱し、東北方言や近畿方言、沖縄における奄美方言や沖縄方言を始めとした16種類に分類した。
また、日本の方言の中にはアイヌ語や沖縄方言のような消滅の危機にあるものがある。私たちとっても身近である「言葉」だが、今回は「方言」に焦点を当てて考えていきたいと思う。歴史が深い一方で、近年消滅の可能性もある「方言」について理解を深めることは重要である。
参考文献:文化庁HP「消滅の危機にある言語・方言」https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/index.html
危機言語とは、消滅の危機にある言語のことを指す。ユネスコが発表した「Atlas of the World’s Languages in Danger」には、2009年時点で危機言語として日本の言語が8言語掲載されている。「極めて深刻」と認定されたのは、北海道のアイヌ語である。札幌や知床など、北海道にはアイヌ語を語源とした地名が多い。最近ではゴールデンカムイというマンガにも登場しており、馴染みがある人も多いだろう。「重大な危機」と認定されたのは、八重山語、与那国語の2つ。そして、「危険」と認定されたのが、八丈語、奄美語、国頭語(くにがみ)、沖縄語、宮古語の5つである。以上の掲載された8言語意外にも、東日本大震災の被災地の方言が危機言語に該当する。身近な危機言語や、消滅という課題について一度考えてみて欲しい。
では、方言とはどのようにして生まれたのだろうか。その成り立ちには様々な説がある。
高知大学教育学部日本語学研究室
http://ww4.tiki.ne.jp/~rockcat/kougi01.html
一つは都で生まれた新しい言葉が地方に広まり、都で使われなくなった後も地方で使われ続けた場合だ。昔は交通の便が悪く、移動が自由ではなかった。そのため、都で生まれた新しい言葉は、長い年月をかけて地方に広まっていき、その間に都では使われなくなり、また新しい言葉が生まれるというわけだ。
もう一つは、各地域が一つの「くに」となっていた場合だ。それぞれの地域で独自に、便利な言葉や面白い言葉が生み出された。外からの情報が入りにくい状況で、独自に生み出された言葉は、その地域だけで使われるようになり、隣の「くに」とは異なる言葉が存在するということだ。
今回は、東北地方を中心に使われている方言を取り上げる。
北海道や宮城県で使われている方言である。「しっくりこない」「居心地が悪い」などと言う意味で、宮城県を中心に使われているため、仙台弁として扱われることもある。
一見、標準語のようにも思えるこの言葉だが、宮城県などでは「まさしくそう!」と同意を示したいときに使う。標準語としても使われる言葉であるため、戸惑ったことがある人も多いのではないか。
福島県を中心に、主に東北地方で使われる方言である。「そうだ」という意味を表す。
◆「方言」に関する探究学習のテーマ例
・どのような言葉が消滅の危機にあるのだろう?
・身の回りで言葉に関する問題はあるのだろうか?
あなたへの問い
日本のどの方言に興味を持ちましたか?また、日本以外の言葉で興味のある言葉はありますか?3つ以上挙げてみよう。
◆参考文献
方言区画論と方言境界線と方言圏の比較研究(安部 清哉、人文、13、p21-55、2014)