安価で軽く、加工しやすいプラスチック。第二次世界大戦後、急速に普及した。いまや生活に欠かせない便利な存在だが、これの生み出す環境への影響が、年々表面化している。
原料となる石油自体も、原油の掘削時、輸送時、精製時など、様々な場面で温室効果ガスを排出する。さらに、石油から作られているプラスチックからは、生産、劣化、廃棄の過程において、二酸化炭素などの温室効果ガスが排出される。こうしてプラスチックを起因とした温室効果ガスは、地球温暖化を促進し、様々な環境被害をもたらしていると言われている。
とりわけ、海に浮かぶプラスチックのゴミは、環境への被害を増大させている。世界で使用されたプラスチックは、最終的に海に流れ着く。それがマイクロプラスチックとして海の生き物の体内に入り、食物連鎖に悪影響を及ぼしている。世界全体では、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出していると言われており、このままでは2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるとの試算もある。
これらの問題に対し、国際社会は動き始めている。しかし、意識や成果は、国によって異なっているのが事実だ。欧州の意識は高いが、アジアの取り組みは遅れている傾向にある。そんな中、日本は今どのような取り組みを行っているのか。日本国内でも地域によって取り組みは異なる。プラスチック問題が起こる背景を学ぶと同時に、様々な地域の様々な対策法を知り、自分なりの最善策を考えてみよう。
参考)環境省「海洋ごみ教材」
https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/post_41.html
・リサイクル
プラスチックのリサイクルには、主に3つの方法がある。マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルだ。それぞれにメリットとデメリットがある。
マテリアルリサイクルは、資源物を原料に戻して、新しい物質へと変える、最も浸透しているリサイクル方法である。例えば、ペットボトルをリサイクルしてプラスチックの「ペレット」とし、そこから新しいペットボトルを作る方法などがある。メリットとして、廃棄物を「国産の資源」として確保できることが挙げられる。日本は石油のほとんどを輸入に頼っているため、これが国内で循環できるようになることは、資源の有効活用をすることができる。
ケミカルリサイクルは、その名の通り、「化学的」に分解してリサイクルする方法だ。化学物質レベルまでリサイクルを行うため、物性を変えた資源の循環が可能だという点だ。しかし、これは非常に高度な処理になるため、今後の研究開発が求められている。
サーマルリサイクルは、普及しているリサイクル方法である。サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却する際に出る熱(サーマル)をエネルギーとして利用することで、石油の使用量を減らすという方法だ。例えばごみの焼却場の横に温水プールが設置されていたりするケースがあるが、これも熱(サーマル)を利用している方法の一つだ。
しかし、廃棄物を燃やすと大量の二酸化炭素が発生する。日本はそれでもこれをリサイクルとして認めているが、欧米では燃焼処分をリサイクルと認めていない。
あなたはどのリサイクル方法がよいと思いますか?
・プラ削減に向けた法的・政策的な取り組み
プラスチックの削減のために、様々なところで工夫が成されている。2019年にはプラスチック資源循環戦略が打ち出された。資源有効利用や海洋プラスチックごみ問題や、アジア諸国の輸入制限への対応等への課題へ対処するための、具体的な重点戦略と目標数値が示されている。このうちのひとつが、レジ袋の有料化だった。
また2022年に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、これまで使い捨てされてしまっていたプラスチック製品を「特定プラスチック使用製品」として指定し、これらのプラスチックごみの削減を事業者に求めている。「特定プラスチック仕様製品」についてはストローやフォーク、スプーン、衣類用ハンガー、宿泊業のくしや歯ブラシ、ヘアブラシなどがある。
実際、ホテルではこれまで部屋に置いてあった歯ブラシなどをフロントでの配布にしたり、プラスチック製から木製に変えたりするなどの動きが広がっている。
プラスチック製のストローを削減する動きの中で、紙製、金属製、パスタなど、それぞれのやり方で変化を楽しむ人も出てきている。プラスチックが間違いなく私たちの生活を便利にしていた以上、それから抜け出すためには、行動する本人にとってのわかりやすいメリットが必要だ。環境問題が私たちの生活をどれだけ侵しているのか、そしてそれが個人の少しの行動でいかに変わるものなのか、ひとりひとりの理解が求められている。
・プラスチック廃棄が多い国と少ない国の違いは?
・紙とプラスチック、環境にやさしいのはどっち?
・今あなたが使っているプラスチック製品を、他のもので代用できるか考えてみよう。
・海の生物への被害が大きくなったら、生態系への影響はどうなるだろうか?
・海のごみについて、プラスチック以外はどんなゴミが多いのだろう?
・マイクロプラスチックって何?なぜマイクロプラスチックが生物に有害なのか?
あなたへの問い
プラスチック問題を解決するために、どんなことができますか?3つ以上挙げてみよう。
具体的な事例や取り組みについて、GATEWAYの「ARTICLE」で見てみよう。
カテゴリ:国際
https://education.ownerjapan.co.jp/article/international/1004a-4/
カテゴリ:自然・環境・動物
https://education.ownerjapan.co.jp/article/nature/1011a-5/
テゴリ:自然・環境・動物