「カーシェアリング」で作るつながり(後編)

カテゴリ:防災・復興

宮城県石巻市を拠点に車による被災地支援やコミュニティ・カーシェアリングを始めた吉澤武彦さん。今度は、石巻の経験を「全国へ」発信しています。

◆どんな取り組みをしているか

近年は毎年のように豪雨災害が起こっています。最近は災害が増えていますが、私たちは向き合わなければなりません。そして受け入れなければならない。私たちとしては、災害が起こることを前提として備え、いざというときに車を被災地に集め、必要な人にすぐに届けられるよう形を作っていくことが大事だと考えています。

災害が起こると現地に出向き、地元の行政と協働しながら、被災者や支援団体の方々に車を無償で貸し出す取り組みをしています。2018年7月の西日本豪雨では岡山県で、2019年10月の台風19号では宮城県丸森町などで活動していました。

車は現地で寄付を募ったり、石巻にある車を現地に届けています。そして、全国にいらっしゃるボランティアの方々も車の運搬に協力してくださいます。石巻から岡山、佐賀から石巻など遠距離でも運転してくださいます。「車を運搬することで役立つことができてよかった」と話してくれています。こういう風に多くの方が喜んでもらえる「機会」を用意することが大事だと考えています。

コミュニティ・カーシェアリングについても岡山県や鳥取県など10か所以上に広がっています。

私は石巻で活動を始めた当初から、石巻で生まれた仕組みを全国に広めたいと考えていました。それが、被災地や石巻にとって、一番価値があることだと考えていたからです。石巻の人達が自分たちの経験を語りながら、支援してもらった側から、支援する側に変化すること。それが最大の貢献になると思っていました。

仕組みと機会を作る

本当に相手のためになることは、支援するだけで終わることではありません。できるだけ「仕組み」で続くようにすることを意識しています。最初から、「何が大事か」「何が意味あるのか」を考えながらやりたいと思っています。

例えば東日本大震災の時、福島県で「炊き出し」の支援を行いました。ここでも一工夫を入れました。

当時、避難所は寒かった。みんなは温かいものを食べたい。ただ、私たちが温かい食べ物を配るだけでは、本当に被災地の方々のためにはなりません。物資を渡すだけになると、被災者が自立し続ける仕組みにはなりません。

そこで、炊き出しに使う食材や器具だけ集めておいて、避難所にいる方々に声をかけたんです。そして、皆で一緒に食材や炊き出しをして、温かいご飯を皆で食べました。こうなれば、後は避難所の方々が自分たちでできるように促すことができます。「もの」を提供するのではなくて、炊き出しという「方法」を伝えたのです。このように「仕組み」を作れば、ずっと続けることができると考えています。

「仕切り屋さんになるな」これはバウさんに言われたことです。全部仕切って何でもやると、人が育ちません。できるだけ皆が経験できるように促します。

自立を促すために意識していることは、決断を相手に渡すということです。決断をすることは、「やらされているのではなく、自分で動いている」という意識を持たせることに繋がります。自分で動くという意識は、ずっと続く活動につながると考えています。「自分の役割は何か?」を自分に繰り返し問いかけ、「やりすぎないように」サポートをしています。

◆未来へ向けて・高校生へのメッセージ

今は佐賀県にも支部を作って活動しています。これからは、車を寄付する文化を作っていきたい。例えばいらなくなった車を売ったり、廃車にしてしまうだけではなく、寄付するという選択肢を増やしていきたい。車を寄付するという新しい選択が当たり前になり、全国に根付いていってほしいと考えています。

これが定着することで、困っている人、災害の被害を軽減し、移動の課題を抱えた地域が良くなっていく社会を作っていきたいですね。行動を続ければ、理想の社会を作ることができるので。あとはそれを全部私がやるのではなく、新しい担い手を育てていき、どんどんつないでいきたいですね。

高校生のみなさんには「動く」ということを大事にしてほしいです。いろんなものを読んだり、教えてもらったりするだけではなく、自分の中の感性で味わい、ことばにすることが大切です。動いてみるとそれができるようになってきます。ぜひいろいろ動いてやってみてほしい。頭の中で何かやるというよりも、試しに何かをやってみたり、アイディアを形にしたり、現場に行ってみたりするとか、動きながら探究するというのをやってみたらいいと思います。

あなたへの問い

あなたは世の中の課題を解決するためにどんな「行動」をしますか?

カテゴリ:防災・復興

◆おすすめの本

山田和尚「いのちの力をつかまえろ」

師匠・山田和尚さん(バウさん)のご著書。阪神・淡路大震災での支援をはじめバウさんのご経験がまとめられている。吉澤さん自身、多くの友人にプレゼントしており、「生き方の幅が広がる」とすすめる。


◆コミュニティ・カーシェアリングについてもっと知りたい方はこちら

・コミュニティ・カーシェアリング実践ガイドブック(日本カーシェアリング協会)

https://www.japan-csa.org/pdf/action/docuki-web.pdf

・日本カーシェアリング協会ホームーページ

https://www.japan-csa.org/